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■ 決 断 ■

うらわ話し方教室を始めた時、最初にいらした女性の方は「上の娘が幼稚園に入ったとき、私は自己紹介で頭が真っ白くなってほとんど話せなかったので、この子が幼稚園に入ったときには、せめて自己紹介ぐらいは出来るようになりたい」と言って下の男の子を連れていらっしゃいました。 2〜3ヶ月は私とその男の子を入れて三人で月2回の教室をやっていたのです。
数ヶ月経ち、翌正月には「幼稚園に入園したら役員をやります」と決意され、春にはクラス代表の役を引き受けられたのです。やがてもっと飛躍したいと望まれ読み聞かせのボランティアに参加され現在活躍中です。 その女性は「話し方を学ぶまでは積極的に何かをしようという気は起こらなかったけど、今は人生が変わりました」とおっしゃっています。
何がその人を変えたのでしょうか。あがり症が治り人前での話し方に自信がついたからですね。この人のあがり症が治ったのは、教室に自分一人しかいない時に「それでもやろう」と一大決心をされたからなのです。多くの人は人数が少ないと「これじゃァダメだ」と思われますが、 人を変えるのは「この時しかない」という決断です。さまざまな条件をつける人に限って
目的を達成しません。 自分を変えるには「今」「ここ」という直感力がとても大切なのです。
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■ 勇 気 1 ■

非常に強固なあがり症からまだ完全とはいかないまでも確かな自分を取り戻した人がいます。彼女は自分のあがり症が原因で、三度も専門学校を4月を越えることなく止めています。自己紹介とか研修発表とかが近づくと学校を休み、そのまま行けなくなって止めるというパターンが彼女を苦しめていたのです。 しかしどうしてもその国家資格を必要とする仕事をやりたいという思いを捨てきれず、
11月に私どもの話し方教室へ参加されました。当時の彼女はあがり症と精神的にうつの症状になりそうな思いで精神科の病院からの薬を服用している状態でした。 3月の入学試験は目の前ですから、彼女には後がありません。しかしそんな彼女を変えるきっかけがありました。翌1月のステージ研修に参加したのです。 そのステージは高く、照明もまぶしいほどに自分にそそがれ、
初めての人にはちょっとキツイ感じのステージでしたが、彼女はそこで立ち上げの司会も務め、自分のあがりに関する体験をスピーチすることが出来たのです。大変なプレッシャーと緊張の中で彼女は無事やりとげました。 何が彼女を支えたのでしょうか。 それは必死に振るい起した勇気です。昔からよく言われる諺に「清水の舞台から飛び降りる気持で」というのがありますね。
現状を変えるには時にはこの覚悟、勇気が必要です。無事入学し、現在一年半になるのですが彼女は一日も休まず学校へ通っています。
■ 勇 気 2 ■
話し方教室へ参加して三度目で決定的に自分を変える節目をつかんだ人がいます。彼は自分の声に非常なコンプレックスを持っていて、人前で話すことなどとても出来ないでいたのです。その声が原因でいじめを受けた体験がありますから無理もないところです。  初めて教室に見学へいらした時も、一言も声を出されることはありませんでした。入会された初日に彼の姿はありませんでした。
翌日、彼から電話があり「教室の外まで行っていたけど、どうしても教室へ入る勇気がでなかった」と言ってました。その次の教室へは半分ほど時間が経過してからやっと入って来られたのですが、前に出ての自己紹介も全部話せず、半ばで止められたのです。でも次の教室では自分のあがり症についての思いを素直に語ることが出来ました。 その月に行われたステージ体験に、驚いたことに彼が
参加されたのです。とても参加は無理だろうと参加予定者の名簿に彼の名前は入れていなかったのです。彼も考えに考えての参加だったろうと思います。でもこの勇気を出した参加が彼を大きく一歩抜け出させました。彼が今までになく6分に渡って「私のかくれた趣味」というスピーチをされた時、私は直感的に「彼はもう大丈夫だ」と感じたのです。彼に「自分でも抜け出せたってわかるでしょう」
と聞いたらうなずいていました。 彼にとって「今」というこの機会を逃したら、このあがり症という苦境から抜け出すことはますます難しくなったことでしょう。彼にはそれがわかっていたのです。 人生において自分を変える機会というのはそう滅多にありません。「今」というチャンスを掴むかどうかが決め手です。その時必要なのが一歩踏み出す勇気です。
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■ 困 難 ■

ある女性の方ですが、初めてのPTA の役員を小学校6年生の学年代表として務めることになったのです。引き受けた時には6年生の学年代表は卒業式で保護者代表としての挨拶をしなければならないことを知らなかったのです。とてもあがり症のその人は、もしそのことを知っていたらとても役員など引き受けなかったと嘆いていました。その人にとってとても大きな困難が与えられたのです。
起こってきたところの困難から逃げないで、真正面から取り組んでいけばそれなりの結果がもたらされます。その時、人は成長します。具体的な人生上の成長でもあり、人格としての成長でもあります。その女性は背水の陣を敷き大役を果たしました。終わったその人の充実感は何ものにも代え難いものだったでしょう。 この体験は彼女を変えました。新しい人生にチャレンジする勇気が身についたのです。
大手のパソコン教室に応募し、現在、人に教えるインストラクターとしてとても充実した日々を過ごされています。 与えられた困難は不幸と違います。その人に出来ない困難は来ません。困難に打ち勝つ最良の道は真っ向から向かっていくことです。何とか逃げよう逃げようとしていたら自分を変えることなど出来ません。 困難は確実に自分を変えていくチャンスでもあります。
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■ 感情の放出1 ■
人は内に溜めたつらく惨めな体験からくる感情は、外へ向かって表現しないかぎり消えることはありません。その感情にフタをして思い出さないようにすれば、抑圧された感情となり、自分の人生に大きな障害をもたらします。  ある女性なのですが、高校1年生のときに担任からのいじめをうけ、それ以後8年間の引きこもりになってしまったのです。彼女は一人でがんばり通信教育で高校と大学の卒業資格をとりました。
大学院に入学したく上京し、予備校に入ったのですが、長い間の引きこもりで人と話すことにすっかり自信を失ってしまっていたのです。自信を失うどころか過去の体験が障害となり、人と話すことへ恐怖すら感じていたそうです。 しかし、ステージ体験が彼女を変えました。初めてのステージで彼女は泣きながら自分の思いを話したのです。「私は、あまりにも重い体験だったので今まで誰にも話したことは無かったのですが」
と前置きして、引きこもりだけでなく自分が摂食障害にもなっていたことを話されました。 自分の心の奥に留めた感情や思いを話すと心は軽くなります。話すことは放すことなのです。 その後、郷里で大学院に入学した彼女からのメールです。 「 人前で話すことがとても怖くて自分にも自信がなかった私ですが、浦和教室でのスピーチの練習や、発表会で皆さんの前で自分の過去を話した(皆さんの前で泣いてしまいましたが)という体験は、私にとって大きな第一歩となりました。
この度大学院入試が無事に終わり、地元の大学院に合格することができました。試験の面接では今までのような話すことへの恐怖感はなく、言葉は下手でしたが自分の入学したいという気持ちを面接官に伝えることができたと思います」
■ 感情の放出2 ■

見学にいらした女性の中で印象深い人がいます。体験で前に出て話してもらったのですが、その時、ためにたまっていた感情が噴出し「もう限界なんです」と人目もはばからず大泣きで話された方がいます。あるカルチャーの講師をされていた方なのですが、人前で話すのが苦手なのに仕事柄話さなければならないつらさに耐えていたのです。 彼女と親しく話しているうちに、彼女のもう一つのつらさが見えてきました。
健康を指導するインストラクターなのに、自分自身がひどく健康を害しているところを持ち、さらに隠れた喫煙者だったのです。仕事では自分の実像を隠していたのですが、次第にそのことが彼女を苦しめていったのです。 人は包み隠さず話すと気持が楽になります。彼女のあがり症からの解放は早いものでした。ホールでの発表会では落ち着いた司会をこなし、スピーチも全然あがることなく自然体で見事にこなしたのです。
彼女があがり症から救われたのは、自分の心を解放したからなのです。心にやましさを抱えて人前に立つと、無意識的に人に見抜かれるんじゃないかと怯える心が働きます。怯えないまでも堂々とした自信がもてないのです。これがあがり症の一つの正体です。 辛く惨めな感情や後ろめたい思いは自己否定となり、人前に立った時、ことさら不安や緊張をもたらします。マイナスの感情は放出し、心を正しくする、それがあがり症から解放される一つの道です。
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■ 場の働き ■
自分を変えるのに大切な働きをするのが場です。人の心は自分をとりまく環境や人々からさまざまな影響を受けていて、目には見えなくても相互に関連し合っています。自分がどこの場に所属するかというのはとても大切な所以です。昔からの諺に「朱に染まれば赤くなる」と言われているくらいです。 あそこにいれば何となく癒される、あそこだとそのままの自分でいられると感じられる場が望ましいのです。人は変わるためには心の構えを捨て、自分をさらけ出す必要があるからです。
もともとあがり症の本質には、自分をよく見せたい思いや人にどう思われるかといった人との比較がありますので、何となく自分の弱点を出しづらい場はよくないのです。  ある女子大生なのですが、卒論の発表をみんなの前でしなければならないので、あがり症の彼女はそのために、授業の合間をぬって話し方教室で発表の練習をしました。結果は100%満足のいくものではないにしても難なくこなせたそうです。その後遠方へ就職をされていたのですが、休みの時にひょこっと教室へ
顔を出されたのです。その時のスピーチは泣きながらお父さんを亡くされた話をされました。実に素直に自分が出せているのです。 それから数ヶ月経って再びいらした時には「私は今、人前で話すのがとても楽しい」と報告されました。彼女のあがり症が治った要因は、たぶん自分を飾らずに話が出来るようになったからではないかと思うのです。そのままの自分を出せる場・・・それがとても大切な働きをします。
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■ 積み重ね ■
あがり症になるきっかけは些細なことが多いものなのです。国語の時間に本を読んでいて声が震えたとか、自己紹介でうまく話せなかったとか、自分の前に話した人がとてもうまくて、自分の番を待つ間にパニックになったとか、誰でも一度や二度はありそうなことがきっかけになっています。 こうした体験を一度すると「また今度も」という不安が先にたちます。不安が緊張を呼びあがり症を引き起こしていきます。これが習慣性となりあがり症を固定させます。
ほとんどのあがり症は心の習慣性によるものなのです。この心の習慣性をこわす必要があります。 一つはイメージ・トレーニングや暗示法を用いて潜在意識に働きかけ古い心の習慣を変えていくやりかたもあります。また繰り返す言葉の力で意識を変えることも出来ます。 が、 最も確実な方法は、成功体験を積み重ねていくことです。 早い人で2〜3回の体験で「何とか出来そう」と自信を取り戻す方もいます。でも人は人、自分は自分です。あせる必要はありません。
人の前で話すという体験を積み重ねていくうちに、確実に変わっていきます。  ある男性の方なのですが、初めてのステージ体験の時、終わった後も緊張が解けずお昼弁当を食べれなかったほどなのですが、今では重要な会議にも出席され発言されています。その人の仕事に関する専門的なスピーチは私たちにもわかり易く、毎回聞くのが楽しみなほどです。 要は体験を重ねながら「あがる」という習慣的な心を「大丈夫、なんとか話せそう」という心に変えていけばいいのです。
片栗粉の原理というのがあります。片栗粉にお湯をそそいでかきまぜて透明にしていくのですが、あせってかきまぜてもなかなか透明になりませんが、辛抱してかきまぜているうちに突然透明になります。人の変化も同じです。あせらず努力をしていると、ふと気がついた時にあがらないで話している自分を発見します。
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■ ありのままの自分を出す ■
あがり症の本質は自分を人前にさらけ出すことへの不安、恐れなのです。 そのために自分を飾ろうとしたり、心に構えたり、失敗を恐れたりします。私たちは幼い頃は素直にそのままの自分でいられたのですが、いつの頃からか人と話す時に、相手に応じて言葉を選んだり、心に構えたりするようになってきました。時には自分の内心を隠し、仮面の自分を見せたりもします。日常でこうした駆け引きの話し方をしていますから、そのままの自分、ありのままの自分を出すのには抵抗感があるのです。
人前に立ったときは心が緊張の最先端にありますから、駆け引きの余裕がありません。そして自分のそのままが見られる不安に襲われます。人はそのままの自分、ありのままの自分を語るようになると変わります。話す楽しさは素直に本心を語るところにあります。駆け引きしたり、構えていたりする会話は楽しくありません。人前で話すのも同じです。 話し方教室で変わっていく多くのパターンは、そのままの自分、ありのままの自分を出せるようになったおかげです。  ある男性の報告です。
「最近私は変わってきました。以前はうまく話せなくて、上司の前では、汗をかくし声も上ずり早口になって・・。電話でも大変でした。少人数の時でも、電話に出ると声がふるえて、汗もかくし大変だったのですが、最近はみんなの前であがらず、頭のなかで整理しながら話せるようになりました。上司と話す機会もふえ、よくしゃべれるようになりました。云々」 今まで話すことへの苦手意識でうまく話せない状態だったのです。それが教室でそのままの自分、ありのままの自分を出して話すようにしていたら、
話すことへの苦手意識が取れてきたのです。
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■ インナーチャイルド ■
人は幼い頃の環境や体験からくる心に受けた印象をいつまでも抱えています。 その時につくりあげた思い込みを自分なのだと固定化させ、成長してからもさまざまな人生上の問題となっています。親などから「そんな話し方をしちゃダメでしょ」と強い抑圧を受けて育った人は、その抑圧と反発とで吃音という症状を起したり、そこまでいかないまでも人との会話や話し方が苦手になったりします。そしてそれが元々の自分なのだと思いこみます。思い込みでつくりあげた自分(仮想の自分)が自己限定をし、いつまでも苦しみます。いつか自己限定から解放し、
誰からも束縛されない自分を取り戻す必要があります。  ある女性は「人の目が恐い」と言ってひどく落ち込んでいました。この人などは幼い頃から過酷な道を生きてきた人でした。成人してからも心の中には幼い自分の思いが残っているのです(インナーチャイルド)。もう一人、人の目が恐いという思いから人前で話すことなど自分には出来ないと思っていた方が、6年の歳月がかかりましたが今ではある会の会長として務めを立派に果たしていらっしゃいます。 誰しも自分の中のインナーチャイルドの影響を受けています。
人前で話すのが苦手な人の中で多いのが、幼い頃からいい子やしっかり者で来た人です。育つ環境の中でそのままの自分が出せず、親や先生から見たいい子を生きてきた人や、家族構成のなかでしっかり者の自分を懸命に生きてきた人は、自分の感情をずっと抑えてきています。自分のストレートな感情や本心を出さないようにしてきたのです。 それは自分そのものの姿ではなく、仮想の自分、自分の一面に過ぎないことに気がつく必要があります。誰でも自分のストレートな感情を出していい、自分の本心を出しても構わないという意識を持つことが大切です。
内なるチャイルドに語りかけるのです。「もう大丈夫よ、もう大人なんだから私の本心を出しても傷つくことはないのよ」と。 心のなかの「負」の部分があがり症などの姿となって現われるように思えます。

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